今日の言葉(12)「敵に教えられる」

◎ 敵に教えられる  (経営の神様:松下幸之助翁)

己が正しいと思い込めば、それに異を唱える人は万事正しくないことになる。己が正義で、相手は不正義なのである。いわば敵なのである。だから憎くなる。倒したくなる。絶滅したくなる。人間の情として、これもまたやむを得ないかもしれないけれど、我々は、我が妨げとばかり思い込んでいるその相手からも、実はいろいろの益を得ているのである。相手がこうするから自分はこうしようこうやって来るならこう対抗しようと、あれこれ知恵をしぼって考える。そして次第に進歩する。自分が自分で考えているようだけれど、実は相手に教えられているのである。相手の刺激で、我が知恵をしぼっているのである。敵に教えられているのである。

倒すだけが能ではない。敵がなければ教えもない。従って進歩もない。だからその対立は対立のままに認めて、互いに教え教えられつつ、進歩向上する道を求めたいのである。つまり対立しつつ調和する道を求めたいのである。それが自然の理というものである。共存の理というものである。そしてそれが繁栄の理なのである。

(松下幸之助:道をひらくより)

 

今日のことば(11)「大病に薬・・・・・」

◎ 大病に薬なし

もともと薬は体の自癒作用(自分で治ろうとする力)を、助長するのが主な役目と言われている。その体が弱りに弱って、再生の見込みがないならば、どんないい薬でもあまり役に立たない。物事が極端に悪化してからでは、手の施しようがない、・・・・・ということ。

 

今日の言葉(10)「自分を治めえぬ人は・・・・・」

◎ 自分を治めえぬ人は 人を治めることは出来ない  (三井財閥:団 琢磨)

三井の柱として広く事業を手がけ、発展させた団琢磨は、徹底して自己管理に務めた。それをしないで、部下を管理することはできないと心得ていたからだ。それでは自己管理をするには、どうすればよいか。しっかりとした使命感と価値観を備え、言行を整えることである。そのようにして自らを律し、誠実で責任感のあるリーダーになれば、部下は感化され、細かく指図命令されなくても、自主的に動くようになる・・・・・ということ。

 

今日のことば(9)「春風をもって・・・・・」

◎春風もって人に接し、秋霜をもって自らつつしむ (佐藤一斎:江戸後期の儒学者)

人に対しては、春風のように暖かくやさしく接し、自分自身に対してはあの秋の冷たい霜のように厳しく律するようにせよ、ということ。現実にはどうだろう。人に接するのに秋霜をもってし、自分自身には春風をもってする人、或いは人にも自分にも春風というよりは生暖かくて、さわやかでもなんでもない風をもって対するという人が多いのではないだろうか。それが一番楽だからである。

明治の文豪「夏目漱石」は自分や家族に対しては非常に厳しく律したが、信頼する友人・同僚に対してはこの上もなく暖かく、面倒もよくみた。ある時、地方に住む一青年から手紙が届いた。大学で文学を学んで卒業したが、就職先がなくて大変困っている。先生に就職先をお世話していただきたいと言う文面である。漱石はそれに対して「自分の口を糊することができぬ法はない。自分のことは自分でせよ。奉職口を人に頼むなどとは、もってのほかである」という返事を書いた。甘い期待を抱いている青年の頭から、まさしく冷水を浴びせるようなものであった。漱石はそうでもしなければ、この青年は自立できないと考えたのである。しかし、漱石は封筒に50円の為替を忍ばせることを忘れなかった。「春風」はただ暖かく、快いものだけではなかったのである。