信仰の対象となった犬や猫

古くから人間と共に暮らしてきた犬や猫は、神として崇められることもあった。
たとえば、古代エジプトで、愛と美の女神は「バステト」といい、人間の体に猫の頭を持っている。手に楽器を持ち、踊りを愛する明るい性格で、家を守護し、愛と豊穣を司るとされるから、エジプトにおいても猫は、鼠の害から穀物や家を守る存在として愛されていたのだろう。

これに対し、犬の神は「アヌビス」という名で、死と深く関わるとされる。
紀元前1300年ごろのファラオで、黄金マスクが有名なツタンカーメンのピラミッドには「ファラオの眠りを妨げる者には死の翼が触れるだろう」という呪いの言葉とともに、アヌビスの絵が描かれていたという。つまりアヌビスは、崩御した王を守る神として信仰されてきたらしいのだ。それは、犬たちが餌を求めて墓場をうろついたことのほかに、夜中に遠吠えをする習性が「闇の動物」をイメージさせたからかもしれない。ギリシャ神話でも、月の女神であり死者や魔術師の神でもあるヘカテは、地獄の猛犬を連れ歩いているとされた。しかし中世ヨーロッパでは立場が逆転する。猫、特に黒猫は魔女のペットであるとされ、忌み嫌われたのだ。それに対して犬は王侯貴族たちに猟犬として大切にされ、人間を守る存在とされた。

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